丸山:今日はお忙しいところ、お越しいただきありがとうございます。新潟県社会福祉士会は、2026年に法人化20周年という節目を迎えます。これを記念して、社会福祉の新たな可能性を広げる特別企画として著名人であるスーパー・ササダンゴ・マシンさんのお話を聴きたい、と企画しました。早速ですが、社会福祉という分野をどのように捉えていらっしゃいますか?
スーパー・ササダンゴ・マシン(以下、SSM):
社会福祉っていう言葉自体からだと、やっぱり堅苦しいイメージがあったりします。そして、専門的な分野だなって。でも、僕は『八千代コースター』という番組のコーナーで、コロナ禍の頃からフードバンクとか子ども食堂、あとは障がい者施設とかをロケで周らせていただいているんです。なので、福祉は割と身近な現場だと思っています。もちろん専門的な知識が必要ということは分かります。だけど、僕たちの生活と地続きにある分野だということに気づきました。我々が生きている世界と福祉は人の暮らしそのもので、区別できるものじゃない。そして、ちょっと綺麗な言い方だけど、笑顔でいられるために必要なことだと思っています。
丸山:そんな風に考えていただいているなんて本当に感激です。その言葉だけでも、今日、お会いすることができて良かった(笑)。社会福祉士にとって、ものすごく励みになるメッセージですし、間違いなくモチベーションが上がります。ありがとうございます。
SSM:社会福祉士さんの存在ってすごい大事なんだと思います。福祉を必要としている人たちにとっては、かけがえのない存在じゃないですか。ご本人にとっては、家族とか友人とは違うけど特別な存在なんだろうと思います。生きるために必要な人って感じですかね。でも、僕がお会いしてきた福祉の人って、みなさん自然体でやられている人が多かった。そこにいることが当たり前って思っている人たちという印象です。

丸山:『当たり前に存在している』という表現は素敵ですね!!おっしゃる通りで、人が生きて歳を重ねるのはとても自然なことですし、障がいを抱えている方の存在も特別視するものではないんですよね。みんな一緒に生きている。ササダンゴ・マシンさんが実際に福祉の現場を見ていただいたことは大変嬉しいです。施設の中というのは、こちらからお邪魔しないとなかなか目にすることができないですから。


SSM:世の中というのは、我々のような仕事をしていると、何をやるにしても費用がかかったり、話や筋を通す順番があったり、なんでも勝手に動くことはできません。でも、福祉の現場へ行くと、自然にお手伝いができたり、いつの間にか一緒に動いたりしているんですよね。それは、ボランティア精神という気高いものではなくて、人間として自然な振舞いというか。そして、マスクを被って、体がでかい僕に対して、当事者が普通に話しかけてくれる。1年振りに会っても「あ、昨日も来てたよねー」って感じで。その接点がもっと社会の中にたくさんあればいいんじゃないかなと思います。
丸山:特に障がいを抱えながら生きている方々は、目の前にいる相手が持っている空気感を察知することに長けていると思います。それは、これまでの体験で身につけたものであったり、これから生きていくための術のようなものかもしれません。
SSM:テレビの若いディレクターやアナウンサーが、福祉の場へ取材に行った時に上手くいかなくて困ったことがある、という相談を受けたことがあるんですが、それは予定調和を持って入るからなんです。期待する答えを持って質問しちゃう。そんなの誰だって嫌に決まっているんだけど、仕事という枠の中でやってしまう。
丸山:当事者は真面目な性格の方々が多いから、予定調和のような硬い空気が疲れるのかもしれませんね。それに、人への感度が高いから、その人が求めていそうな答えをしてくれる。でも、それだと本質に近づけないですね。実はササダンゴ・マシンさんの素顔をいつもジムでお見掛けしているんです。その大きな背中から滲み出ている空気感や所作から、きっと優しい方なんだろうなって想像していました。
SSM:ええっ!でも、僕は普通に性格悪いですよ(笑)。
丸山:そんなことありませんよ。でも、どんな風に悪いと思っていらっしゃるのかはお聞きしたい(笑)。
SSM:テレビのディレクター相手に怒っちゃうときもあります。スタッフにダメ出しとか。今このご時世だから、あんまり怒っちゃいけないんですよね・・・。でも、演者に対するマナーとかモラルに関しては守りたい一線があるんです。あと、僕自身がインタビューの場面でも答えを決めつけてくる感じが苦手だったりします。その相手が狙っている意図って、こちらはすぐに分かることだから。
丸山:それは性格が悪いのではなくて、正義感が強いんですよ(笑)。私たちは所属組織が違う者同士で、連携をしながら仕事をする場面が多いんです。そういうときに、もう少しこうしたらクライエントのためになるのになと思ったり、根本的に指導した方がいいかなと思うときもあります。新潟県社会福祉士会という職能団体の副会長として言うときもありますが、相手がどう思うかという判断が難しい。「私たちの若い頃は・・・」なんて言うつもりはないんですけど、やっぱりそういう場面では時代の流れを意識しないといけませんね。

SSM:プロレスやテレビの世界にも、どんどん若い人が入ってきます。彼らは明確な夢や目標を持っているから、同じ方向を見やすいんですよね。そこには、先輩後輩というしきたり重視の世界がまだある。芸事を学ぼうとしているんだから当然なんです。そして、飛び抜けた才能だったり、いい素質を持った人ほど、先輩に対して敬意を持っている人が多いです。特に、プロレスの現場って面白いんです。本番の試合はせいぜい10分とか20分です。それ以外は何をしているかと言うと、コミュニケーションなんですよ。トレーニングをしていても、1分ガーッと運動したら、インターバルを取りながら2~3分ほど話す。このコミュニケーションで生まれた阿吽の呼吸が試合に出たりするんですよね。丸山さんは仕事に対して、どんなポリシーを持っているんですか?
丸山:
私の信条はとにかく『ワンストップ』で受け止めるということです。ですので、年代、障がい、生きづらさというカテゴライズはしたくないんです。でも、専門ではないことにまで手を出そうとすると、その方のためにならないこともあります。そういうときは、「私では力不足だから、もっと専門性がある人のところへ一緒に行こう。」ってしています。でも、最初に私という窓口を選んでいただいたことには大きな感謝があります。人が人を支えようとしているわけですから難しさはあります。当然、相性もありますし。ササダンゴ・マシンさんが出演している番組を観ていると、例えば、著名な経営者へのロケの場面とかで、懐への飛込み方が上手だなーって思うことがあります。人との接点の角度が独特ですよね。
SSM:ロケの対象となる方がこれまで受けてきた取材なんかには一応は目を通すんです。その上で、これまでのアプローチとは違う方法を取ることを大事にしています。雑誌なんかに載るような、どこか手触りがいいもの、あるいは、ただ温かさだけを追求したものにはしたくないんですよね。せっかく出会えた人をつまんなそうな人にはしたくないんです。
丸山:その方の懐に飛び込む技術は福祉職にも必要です。例えば、絵をお好きな方がいらっしゃったとして、その方のお宅の玄関に絵が飾られている。そこで、「これは〇〇ですね。素敵ですね。」と言えるかどうか。その言葉を発するためには福祉以外の勉強もしないといけないわけです。そして、そのひと言でクライエントとの心の距離感が縮まるんですよね。だから、福祉以外のものやことに関心を持たなければいけないんだと思っています。あとは、自分自身も含めて、職員のモチベーションをどうしたら一定レベルに保てるかというのは課題でもあります。

SSM:芸能の世界で言えば、夢を追うわけだからお金は二の次みたいな発想があったけど、今はそれが変わってきています。プロレスラーとして、タレントとして売れたいというモチベーションで頑張る。だけど、その過程にいるいわゆる「若手」という世代の人たちでも、やっぱり働いた分お金は欲しいですっていう空気感が当たり前になってきています。まだまだ勉強中なんだから収入はこのぐらいでいいだろうではないんですね。芸能もプロレスの世界も、若手世代は「薄給だけど夢に向かってめちゃめちゃ頑張ってます!」みたいなイメージがあるけど、意外と給料もお休みも、普通にもらえている人が多いです。じゃないと、夢を追い続けることもできません。そして、YoutubeやSNSの出現で、新しい稼ぎ口を自ら開拓できるようになったのも大きい。だから、稼ぐ先をテレビに限定しなくてもよくなったんです。

丸山:そんな環境の中で、ササダンゴ・マシンさんは第一線で頑張られている。プロレスラー、タレント、会社経営者の三足の草鞋って大変だと思います。そんなご自身をどのように客観視されていますか?
SSM:金型の世界で言えば、セールスエンジニアみたいなポジションですかね。技術と営業のどちらも知っていないといけない。作る現場も大事だけど、それを売るという役割も大事なわけで。今はその両方を知っていないといけない時代かなって思うんです。職人的な技術があるわけでも、技術畑の出でもないですけど、自分の会社でできる加工や作れる金型については熟知しているつもりです。お客さんからの依頼や相談に対して「わからない」っていう言葉だけは使わないようにしています。
丸山:知識は必要だけれども、それを発揮するための技術も同時に必要になる。社会福祉士にも同じことが言えると思います。そして、もうひとつはクライエントと接する瞬間に、どれだけ全身全霊で向き合えるかということが大切だと思っています。
SSM:ワークライフバランスって言われてるけど、僕は仕事と遊びに境界線を引くことが難しいタイプです。休むことを否定しているわけじゃないけれど、休むと不安になったり・・・。それじゃいけないと思いながらもずっと仕事脳だったりしますよね。でも、それが全身全霊として観てる人に伝わるような気がします。
丸山:そろそろ最後の話題になりますが、ササダンゴ・マシンさんの笑いの哲学をお聞きしたいです。人を笑わせることって、とても難しいこと。福祉職もクライエントとの緩やかな場面では、やっぱり笑顔になっていただきたいものです。ササダンゴ・マシンさんの笑いには、人を不快にさせないというとても大きな要素が含まれているように思います。これはものすごい技術だなって。
SSM:
他者からのリアクションとして、本当に感動したとか、ためになったって言われても、それって具体的に分からないでしょ。でも、笑い声っていうのはリアルなんですよ。同時に笑いって残酷なもので、この人に認められたいとか、この人に気に入られたいって思わなければ笑う必要なんてないと思うんです。みなさんを笑わせることに何かしら哲学的なものを抱いていて、笑わせるのが得意だって思われているかもしれないけど、僕は笑うことが仕事なんです。ディレクターさんとかスタッフの人たちがロケに行って作ってくれたVTRを観て、一番面白いところを見つけてあげる。僕が笑うことで、そのVTRが見やすくなるように、笑うことでそのVTRに没入させるための補助線を引く。それが僕の仕事なんだと思います。
丸山:笑い合うことで、自然と心の壁がなくなって、お互いに一歩踏み込んだコミュニケーションができるようになりますよね。やっぱり、信頼関係がない相手の前で、無邪気に笑うなんて、なかなかできないですもんね。今日は、ササダンゴ・マシンさんとの会話を通して、私自身の心もとてもほぐれました。貴重なお時間をいただき、誠にありがとうございました。


1977年生まれ、新潟県新潟市東区出身。2003年に「マッスル坂井」としてプロレスデビューするも、実家の金型工場を継ぐため2010年に一度引退し、2012年より謎の覆面レスラーとして活動を再開。現在は新潟大学大学院で技術経営修士(専門職)を取得した学識を生かし、坂井精機株式会社の代表取締役社長とプロレスラー・タレント業を「ギリギリ」のバランスで両立させている。
最大の特徴は、対戦相手の分析や試合の見どころをパワーポイントで丁寧に解説するプレゼン技術であり、必殺技の「垂直落下式リーマンショック」と共に彼の代名詞となっている。恵まれた体格(183cm/120kg)と論理的なプレゼン能力を武器に「世の中のだいたいの課題は解決可能」と豪語する一方、プロレスラーながら運動自体はあまり得意ではないという意外な一面も持つ。現在はテレビ・ラジオのレギュラーを多数抱えるほか、脚本家や監督としても多才に活動中である。


1976年生まれ。早稲田大学人間科学部卒業。研究テーマは「介護支援専門員の業務継続要因」。株式会社ラ・ポール代表取締役、居宅介護支援事業所管理者・主任介護支援専門員として地域福祉の現場に根ざしたケアマネジメントを実践。当会副会長、新潟市居宅介護支援事業者連絡協議会会長として、地域福祉、在宅医療・介護連携、権利擁護、多機関連携の分野で現場と制度をつなぐ役割を担う。保護司、新潟地区更生保護女性会会長、リンクコーディネーターとして地域の支援ネットワークづくりにも携わる。
当会では研修企画・人材育成・組織運営を中心に、「現場に必要な学びを届ける」「誰もが参画しやすい職能団体づくり」を軸に活動。法人研修班担当理事として研修体系の整備や講師との協働を進め、社会福祉士が学び続け、つながり続けられる環境づくりに取り組んでいる。ソーシャルワーカーデーでは世代を越えた交流の場を創出し専門職の魅力を発信。行政・養成校・医療・福祉機関と連携し、「必要な支援を必要な人へ」届ける活動を進めている。組織運営では後進育成やDX推進を重視し、参加しやすく持続可能な職能団体づくりに取り組んでいる。
趣味は愛猫との時間。